減圧症とは、シリンダーから吸い込んだ窒素が急浮上した際に体内で気泡化することで、さまざまな症状を引き起こすことをいいます。
この減圧症の症状は皮膚の痒みや関節の痛みなどが多いですが、時には意識障害や死亡など生命に関わる症状を引き起こすことがあるので、しっかりと予防する必要があります。
減圧症を予防する方法の一つに、「ダイビング後に飛行機に乗らない」というものがあります。
これは、ダイビング後に飛行機に乗ることで減圧症を引き起こす可能性を高めるからです。
今回は、
- ダイビング後に飛行機に乗ってはいけない理由、飛行機と減圧症の関係
- ダイビングに飛行機に乗るまでの時間
- 減圧症を予防する方法
この3つについて、詳しく解説していきます。
Contents (目次)
ダイビング後に飛行機に乗ってはいけない理由
これからダイビングを始めようという方に必ず知っておいてほしいのが、「ダイビング後に飛行機に乗ってはいけない」ということです。
飛行機にスナック菓子を持ち込んだときに、スナック菓子の袋がパンパンに膨れてしまったという経験がある方が多いと思います。
これと同じ原理で、ダイビング後に飛行機に乗ると体内で窒素が膨張して、様々な症状を引き起こしてしまいます。
ダイビング後に飛行機に乗ると急浮上したのと同じ状態になる
ダイビングでは急浮上はご法度です。
急浮上や急潜水を行うと一気に体に圧がかかるので、シリンダーから吸い込んだ窒素が膨らんでしまい、減圧症を引き起こすリスクが高まるからです。
この「一気に体に圧がかかる」状況は、ダイビングの急浮上・急潜水以外では、登山や飛行機など気圧の低くなる環境下でも起こります。
飛行機が飛ぶのは高度約10,000m付近で、水面下に対してマイナス1気圧近くにもなる上空を飛びます。
このマイナス1気圧が直接私たちの体にかかるわけではなく、機内は快適に過ごせるように気圧が調整されていますが、それでも2,000〜2,500mを飛んでいる時の気圧に相当します。
先ほどお話しした「パンパンに膨らんだスナック菓子の袋」は、窒素が膨張することで起こる現象です。
この現象と同じく、体内に窒素が残った状態で飛行機に乗ると体内で窒素が膨張してしまい、減圧症を引き起こすリスクが高くなります。
飛行機に乗る前に窒素を体外から完全に排出することが重要
窒素は水深3〜6m、3〜5分以上の間「安全停止」をしていても完全に体外に排出されません。
またダイビングの方法やダイビングをした回数によって、体内に残留する窒素の量が異なるので、その分体外に排出されるまでの時間が異なります。
また、組織によって窒素を排出するのに時間がかかる組織があります。
- 筋肉
- 脳
- 皮膚
- 肺
- 腎臓
- 肝臓
など
これらの組織は窒素が溶け込みやすく、窒素が排出されるまでの時間が短い組織です。
- 骨
- 関節
- 靭帯
- 脂肪
- 骨髄
など
これらの組織は、窒素が溶け込みにくい組織ですが、排出されるのに時間がかかる組織です。
ダイビングの際にどの組織に窒素が溶け込んだかを把握することまではできないので、全ての組織から窒素を排出する時間を空けることが重要です。
ダイビング後に飛行機に乗るまでの時間は?24時間空けるのが理想
各ダイビング講習を行う団体によってダイビング後に飛行機に乗るまでの時間で推奨されている時間が異なりますが、ここではダイビング後24時間をおすすめします。
この24時間というのは、体内の全ての組織から完全に窒素が排出されるまでの時間の目安です。
ダイビング後に飛行機に乗るときは、完全に体内から窒素が排出されていなければいけません。
先ほどお話ししたように、少しでも体内に窒素が残っていれば、その窒素が膨張して体内の組織を圧迫してしまい、減圧症を引き起こしてしまうからです。
ダイビングの方法や時間、組織によって窒素の残留時間が長い組織があることから、24時間は最低でも地上で過ごしてから飛行機に乗るようにします。
スキューバダイビングショップなどに問い合わせる際に、飛行機の搭乗時間が決まっている場合は、搭乗時間を伝えておくとショップスタッフがスケジュールを組んでくれます。
飛行機の搭乗時間ギリギリまでダイビングを楽しみたい場合はダイビングを断られるケースが多いので、時間に余裕を持ってスケジュールを組むようにしましょう。
飛行機だけじゃない!減圧症を予防するために必要なこと
ここまでダイビング後すぐに飛行機に乗ってはいけない理由を解説してきました。
最低でもダイビング後24時間は時間を空けて、完全に体内から窒素を排出してから飛行機に乗るようにすることで、減圧症のリスクを低くすることができます。
減圧症を防ぐ予防法は24時間以上飛行機に乗るまでの時間を空けることだけでなく、さまざまな予防法があります。
ここからは、ダイビングの際にできる減圧症を予防する方法を解説していきます。
生活習慣を整える
減圧症は血液の循環状態に作用するので、日頃から生活習慣を整えることが重要です。
特に肥満気味の人は減圧症になりやすい傾向にあるので、ダイエットをしてからダイビングを楽しむようにしましょう。
また、運動不足の人は血流が悪いことが多いので、ダイビングをする前にジョギングなど軽い運動を習慣化させて、筋肉をつけて血流を良くしておくことが大切です。
前日と当日は体調を整えておく
飲酒は血流に大きく影響を及ぼすので、ダイビング前日の飲酒は控えます。
また、女性の場合は生理前や生理中に減圧症にかかりやすくなるので、生理前や生理中のダイビングは控えましょう。
またダイビング前日、あるいは当日に飛行機に乗ったり、山越えをしてからダイビングをするのは避けます。
もしダイビング当日に車で目的地へ移動する場合は、標高の低いルートを調べておくといいでしょう。
ダイビングの基本パターンを守る
ダイビングの基本パターンは、レジャダイビングで最大水深30mに達して、あとはゆっくりと浮上していくパターンです。
これ以外の箱型やのこぎり型、リバース型などの潜水パターンは減圧症のリスクを高めてしまうので避けます。
1日に複数本潜る場合は、必ず2本目から3本目にかけて徐々に最大水深を浅くしていくようにしましょう。
急浮上をしない
減圧症を防ぐのに最も重要なのが、浮上速度です。
水面が浅いところほど水圧の変化が大きいので、ダイビング終了15分前には水深10mより浅いところに浮上しておき、浅いところで徐々に水深を上げながら10分かけて減圧を行います。
さらに水深5mで3分間安全停止を行い、ゆっくりと2分近くかけて浮上するようにしましょう。
まとめ
ダイビング後に飛行機に乗る時は、最低でも24時間は時間を空けるようにしましょう。
体内に少しでも窒素が残っていると、その窒素が飛行機に乗った際の気圧の変化で膨張し、組織を圧迫して減圧症を引き起こすリスクを高めるからです。
飛行機に乗ってダイビングを楽しみに来た方は、飛行機に乗って帰るギリギリまでダイビングを楽しみたいという方が多いと思いますが、余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。
もし飛行機の搭乗時間が事前に決まっている場合は、ダイビングショップに搭乗時間を伝えておくことで、安全なダイビングが楽しめるスケジュールをショップスタッフが組んでくれます。
また、減圧症は皮膚の痒みや関節の痛みなど軽い症状だけでなく、時には意識障害や死亡など重篤な症状を引き起こす場合がある怖い症状です。
飛行機に乗るまでの時間に余裕をもち、減圧症を防ぐ予防法を全て試して可能な限り減圧症を防ぐようにしましょう。
減圧症についてもっと詳しく知りたい方のために”減圧症とは?、注意点・予防策”についてまとめてある以下の記事を覗いてみて下さいね。